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大前研一「日本の人口問題は戸籍と移民で解決できる!」日本の将来課題を解決する

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前回の記事で、大前研一氏のアベノミクスに関する問題点と高橋洋一氏のアベノミクスに関する疑問への回答を続けて投稿したところ、圧倒的に大前氏の記事へのアクセスが多かった。その際に賛否両論も多かったために新たな投稿について悩んだが、前回の動画の続きがあるので、本日要約と一緒に投稿したい。


【向研会】人口減少の衝撃 ~少子高齢化の現状と将来課題~ - YouTube

 

人口減少は何を引き起こすのか?

少子高齢化は、日本が抱えている最大の問題で、これだけの人口減少を経験した国は存在しない。

日本人は寿命が長く、2040年には85歳以上の人口が一番多くなる。団塊ジュニア世代が結婚して子供を生まないので、団塊ジュニア世代以降に人口のピークが無い。団塊世代ジュニア世代の1/3は結婚していないか、結婚しても子供が一人以下である。子供が二人でやっと人口を維持できる。その結果、日本の就業人口は、今後大きく減少し、2040年には65歳以上の高齢者と子供を合わせた負担される側の人口が、就業人口(負担する側)より多くなる。これでは国を維持できない。

高度成長期には人口ボーナスが存在した。国が借金をしても、それを返す人口がどんどん増えていく。今後は人口の減り方が激しいために、借金を返す人が急激に少なくなる。その結果、人口減少が引き起こす問題は国債の暴落である。

人口減少=労働力の低下=税収の減少=消費の低下

 

自治体においても、人口1万人を切るとサービスの維持が難しくなる。人口の減少は、経済の縮小をもたらし、国債暴落のトリガーとなりえる。

 

高齢者の活用、女性の社会進出は歯止めになりえるのか?

政府が提案している成長戦略(高齢者や女性の社会進出)は、既に現実となっている。

現在の労働人口6500万人に対し、非労働人口(専業主婦、子供、高齢者)は4500万人だが、普通に高齢者が定年退職していけば年間80万人の労働者が減っていくことになるが、現状では30万人しか減っていない。差分の50万人は女性や高齢者である。

このまま高齢者や女性が社会進出を続けても、2030年には300万人の労働者が不足する。2060年には1800万人が不足するために、国防、消防、警察や力仕事を現状のレベルで維持するのが難しくなる。

 

「成長しなくても、現状維持でいいんじゃない」と言う意見はどうか?

債務が無ければそれで良いが、借金を返す見通しがなくなるとデフォルトに繋がってしまう。1300兆円の借金を返す人と財源が必要である。

 

他の国との比較

  • 他の国の人口推移は、自然増と移民の組み合わせとなっている。日本のみが自然増による計画で人口減となる。イギリスは、近年は移民が増加傾向にあり、フランスは政策により自然増に力を入れている。ドイツは移民を強化し、スウェーデンは移民に加え自然増の回復を目指している。
  • 出産率は、イスラエルの3.05人が圧倒的に高く、次にメキシコの2.24人、他は平均してカトリックの国の出産率が高い。日本は1.41人で、日本より少ないのは韓国とポルトガルくらいである。出産率が1.7人にまで上がれば人口減少が緩やかになる。
  • 日本人男性の育児時間は1時間程度だが、スウェーデンは3時間以上、日本人は長時間労働で育児に時間を割けない。また国家の育児予算も、GDP比で日本0.96%、フランス3.2% イギリス3.8%、スウェーデン3.6%である。フランスは、育児給付に加え、学費免除、所得税の優遇を実施している。特に所得税の優遇はN/N乗方式による、子供を生めば生むほど税額が安くなる仕組みを取っている。

 

対策1: 戸籍問題

日本では、若い人のできちゃった婚が半数以上を占めるが(15歳から19歳で85%、全体平均でも25%)、その原因として戸籍問題がある。フランスやスウェーデンは40年前に戸籍制度を廃止し、事実婚を認めている。

戸籍制度は、近年では中国、韓国、日本にしか存在しない制度となっており、その結果、堕胎が生まれる子の数より多いという推計もある。日本の戸籍制度は、明治時代の法律で、最近までカタカナ表記だった。また戸籍はDB化されていない。何故なら、法律に戸籍は綴るものとあり、紙で綴って保管する必要がある。戸籍自体は、どこに置いてもよく、事実、皇居に300人、富士山の頂上に300人が戸籍を置いている。どこに置いても良い制度であれば、無くても同じである。また、日本の戸籍は現代の家を中心に考えられているので、住民票と同じ役割しか持たない。それであれば住民票だけで十分である。マイナンバー制度も住民票をベースに作ることになっている。

日本の平均初婚年齢は29.2才で、第一子出産の年齢が30.8才となっている。他の先進国では、第一子出産年齢が初婚年齢よりも若い。戸籍がないとこうなる。

その上で、ヨーロッパでは婚外子に関する制度を作り、給付金を出して効果が出ている。80年代のフランスの婚外子は11%だったが、現在では52%となっており、オランダは、4%から45%に上がっている。日本は、0.8%だったのが2.2%と断然低い。

 

対策2: 移民の受け入れ

子供を増やせない場合は、移民しかない。特に、日本では高度人材、留学生、介護の人材が足りない。OECD諸国では、ルクセンブルクの移民が42%で、スイス、オーストラリア、イスラエルニュージーランドなどは20%台に対し、日本は1.1%となり、日本より少ないのはメキシコなど移民が来ない国(自らが移民となっている国)のみで、日本のような高度な国家で人口が減っても移民を受け入れないのは異常である。

シンガポールは、国民300万人に対し永住者などを受け入れて人口550万人となっている。建設業44万人、介護サポート4千人、メイド28万人、高度人材17万人となり、特にシンガポールの子供の英語力が上達したのは、フィリピン人メイドによるところが大きい。

対して、日本の高度人材による移民は7万人のみである。

留学生については、アメリカが世界一で、日本への留学は殆どが中国人である。現在の日本のレベルだと良い人材が来ない上に、日本政府も在留外国人を人材不足のバッファ程度にしか使っていない。

 

移民制度への提案

イギリスでは移民を5段階に分けている。そして、成績が良くなれば永住権を出している。

日本でも、夫婦のどちらかが日本国籍の場合は、両方に日本国籍を付与する。また、夫婦が共に外国籍だが、日本で子供が生まれた場合や日本で義務教育を受けた場合にも日本国籍を付与してはどうか?

その上で、移民を3段階に分ける。

1段階: 高度人材(グローバル人材を一か所に集めて競わせる)

2段階: 士業(医師や看護師など外国で資格を有する人を3年研修して問題が無ければ受け入れる)

3段階: 一般労働者(2年間の研修後、就業させる。研修を実施することにより後々のトラブルが減る)

 

人口減少による都市問題

一都三県以外は人口減少が起こっている。千葉や埼玉も、近年は東京から遠いエリアでは人口減所が起きている。将来的に、日本の自治体1800市町村のうち523都市が人口1万人割れし、行政サービスを維持できなくなる恐れがある。

 

政府が掲げる地方創生案も、企業の地方への本社移転による税制優遇などで、単に住所を地方に移転して本社機能を都市部に残してしまえば地方創生の効果が生まれない。

雇用問題も、農民を中心にした農業では再生が難しい。農業基盤整備事業へ政府が42兆円支出したが効果が全く表れなかった。農業を再生するには、オランダモデル(世界第二位の農作物輸出国)による農業の工業化(ハイテク化)しかない。ロシアも経済制裁処置の後にオランダの農業のノウハウを輸入している。

 

他の国では地方再生は政治課題にならないが、田舎のまま魅力が出るケースもある。モンタナ州は昔ながらのアメリカを求める人たちが移住してくる。フランスのラングドック地方は、リゾート開発とヨットハーバーやワインで成功した。地方再生の大きな成功例はこの2つくらいである。

イタリアは常に南部の開発を推し進めようとすると北部の独立問題が立ちはだかる。自分たちの税金を南部につぎ込むのは面白くないのだ。

 

日本では、既に20%以上のメーカーが円高で海外に出ていった。その後労働者はより賃金の低いサービス業へと吸収されていき、産業の空洞化が起こった。アメリカでは、IT、金融、通信などのサービス業がこれらの人材を吸収したことにより日本のようにはならなかった。

 

日本は中央集権のまま地方の活性化を実施しようとしている為、上手くいかないのだ。

 

日本はメガシティー問題を抱えていない珍しい国

世界で、都市のスラム化や犯罪、ゴミ、交通問題を抱えていないのは日本とドイツくらいである。日本で都市問題が発生しない理由は、私鉄の発達にある。鉄道輸送率が、23区で76.1%、首都圏全体でも58.4%もある。これは戦後の鉄道開発の認可が都市開発と一緒だったために、鉄道を中心に街が発達し、50KM圏に都市の人口をばらまいた結果ある。これは世界でも日本だけの現象だ。

にもかかわらず、大前氏は都市に人を住まわせようと考えている。都市圏の容積率と高さ制限を緩和し、安全設計のみを実施する。その結果、東京や大阪の都心では賃料を担保に融資をうけて建築ラッシュが起こる。これは20年は続くであろう。そして、通勤時間も現在の1時間から1時間20分の人を20分にまで短縮し、更なる交通渋滞の緩和が期待できる。

ドイツでは、ミュンヘンが建物の高さ制限を100Mとしており、フランクフルトには高さ制限がない。これらのルールは州が決めればよい。

 

これからのビジネスはどうしたら良いのか?

個人も企業も人口ボーナスを利用する。人口ボーナスがあり、マーケットが大きく、政治が安定している国では、日本の20年前のモデルが通用する。ヤマハの川上源一氏は戦後にピアノの代金を積立にし、音楽教室とセットで販売した。その結果、日本の家庭でのピアノ浸透率が20%となり、世界一位となった。人口ボーナス期のビジネスモデルだが、現在ではインドネシアで同じ手法が大人気である。

人口ボーナスは、中国が今年がピーク、ベトナムは2020年がピーク、フィリピンは2055年まで続く、資源国のイランも来年からマイナスに入る。社会が変わらない限りは、人口ボーナスが示す未来が訪れることとなる。